20万打企画

ジェームズ


僕とは、「惚れ薬」を作るため、夜間の学校を徘徊していた。保健室と薬草学の授業が行われる教室から材料を集め、魔法薬学の教室に行き、道具を揃えた。



「ふふふ、これでスニベリーの心は私のものよ!」



不気味な笑い声を出し、トカゲの尻尾を刻んでいる彼女はまるで御伽噺に出てくる魔女のようだった。(あ、毒リンゴを作る奴ね。カボチャの馬車とか出す親切な奴じゃない方)




「アンタもリリー=エヴァンスとくっつけるし、私たちの未来も明るいわね」



三流悪役の台詞を聞きながら鍋の中身をかき回していた僕が「そうだね」と棒読みで言うと、彼女は不満げに眉を顰めた。



「何、そのやる気のなさ。だいたい、アンタってイイカゲン過ぎじゃない?」

「何が?」


「この間、エヴァンスがスリザリン生に虐められてる所を見たわ。その時、アンタも近くにいたのに知らんぷりだったでしょ。」


「彼女はマグル出身だからスリザリンのイジメの対象になりやすいんだ。一々、首を突っ込んでられないよ」




僕が肩を竦めてそういうと、は口をとがらせ「好きなら助けなさいよ」と小さく呟き、鍋にかかっていた火を消した。そして、紫色に輝いている液体を鍋から取り出し、ビンにつめ込んでいく。



「だいたい、アンタはアンチ・純血主義なんじゃないの?」


「まあね。でも、だからと言って、マグル至上主義者でもない。エヴァンスは、彼女は、たまにマグルの「科学技術」の話をして、魔法を否定するような言葉を発する時があるし、その辺は賛同できないんだよ」



「別に彼女は魔法を否定していないわよ。何かを持ち上げる時、相対的に他方の評価が低くなってしまうこともあるけど、それは表現の問題で、優劣の問題じゃないわ。私はエヴァンスのこと嫌いだけど、彼女の筋が通った考え方は好きよ。彼女のことは大嫌いだけど(2回目)」



「当前だよ。君がマルフォイやミス・ブラックのような純血主義者だったら、僕は今ここにいない」





僕が非難するように彼女を睨むと、彼女は魔法で道具と残った薬草を片付け、椅子に座り机の上に二つのマグカップを出した。僕もそれに習うように椅子に座り、勧められたマグカップを手に持った。彼女はホットミルクを一口飲み、それから話を再会した。



「私は彼らの価値観も素晴らしいと思っているわ」

「・・・冗談だよね?」

「本気よ。だから、シリウスの考え方は認められない」

「さっき君はエヴァンスと同じ意見だって言ったじゃないか。スネイプに感化されたのかい?」


「まさか!そもそも私は彼の価値観については嫌悪感すら抱いているわ」


「へえ。それは素晴らしいね」

「どこがよ!」


「全てだよ。でも、おかしいな。君が言っていることは矛盾していないかい?」



僕はローブから杖を取り出し、宙に4人の名前を書いた。右側にシリウスとスネイプを、左にエヴァンスとマルフォイを書き、シリウスとスネイプにバツを付け、エヴァンスとマルフォイにマルを付けて、肩を竦めた。




「矛盾していないわ。右側は自己嫌悪と自己否定の塊で、左側は自信と誇りを持っているわ。シリウスは純血の身でありながら純血を否定し、スネイプは混血でありながら純血主義を主張しているのよ。こんなバカな話ってないと思うの!」




唾を飛ばしながら一人話し続ける彼女を横目に、僕はホットミルクをすすった。彼女がたまに机を叩くと、彼女のマグカップからホットミルクが零れそうになるので、それだけが心配だった。




「世の中にはたくさんの価値観があって、思想があって、それがぶつかりあって争いが起こるわ。正しいことなんて、なんだか分からなくなる。・・・でもね」




はそこまで言って、口を閉じた。それから、僕の顔を覗きこみ、マグカップを持っていた僕の手の上に優しく包むようにして手を乗せた。「これだけは言えるわ」僕と彼女の視線が交わり、段々と体が熱を帯びていくのがわかった。耳と目元が赤くなっているかもしれない。そう思うと、さらに体が熱くなった。





「自分を否定する奴は幸せになれない」





耳に届いた高くも低くもない声が脳天に届いて全身に甘い痺れを感じた。の真っ直ぐな瞳に胸が高鳴り、の小さな唇に目は釘付けになった。



「・・・、今すぐ君にキスしたい」




「素晴らしいわ、ジェームズ。実験は成功よ!実はアンタのホットミルクの中に惚れ薬を入れておいたのよ。」








ガッツポーズをとり「私たち天才だわ!」と叫んだの肩に僕は手をおいた。



「君を僕の腕の中に閉じ込めて、もう誰とも会わせない様にしたい」


「・・・。ジェームズ、この解毒剤を飲んで」



「君を僕だけのものにしたい。好きなんだ。君が」



「・・・近寄らないで。触らないで。私が鈍器のようなものでアンタの頭を叩く前に、1分1秒でも早く解毒剤を飲みなさい」












、君を誰よりも愛している。君を、メチャクチャにしたい」




「正気に戻れ、バカ眼鏡!!」











その後、二人の影は重なり合い・・・というわけには、勿論いかなかった。
顔を真っ青にした彼女は僕を魔法で押さえ込み、無理やり口に解毒剤を流しいれ、物語は健全に幕を閉じることになる。惚れ薬の危険性を、身をもって知った彼女は、その後惚れ薬を作ることはなかった。








因みに、解毒剤は全く効かなかった。

まあ、これは当然のことなんだ。何故なら、僕らが作った惚れ薬を飲んだのは、ぼくじゃなく、だったんだから。 彼女がおしゃべりに夢中になっている間に、僕は自分と彼女のマグカップを入れ替えていたんだ。










、実験は失敗だよ










君は僕に恋をしなかった

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