兎シリーズ

狡兎三窟こうとさんくつ:難を逃れるのが上手いこと

里の外に出るのは何年ぶりだろうか、暗部としての任務の後、すぐ受付嬢になった私は里の外に出ることがなかった。


仲間たちが安心して帰ってこれるような里であって欲しい、 その思いから受付係を引き受けたのだ。


受付は実際やりがいのある仕事で、情報管理、他の里からの侵入者の取り締まり、抜け忍の監視、仕事を振り分けるため必要な個々の忍の客観的な能力の判断と管理などがある。

書類整理は所詮そのおまけ。


そして、常に里内にいるから火影様の盾となることができる。





私は受付が天職だと思っている。







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ちょっと、考えに耽りすぎたかもしれない。

ちょっと、はしゃぎすぎたかもしれない。

ちょっと、里から離れてしまったかもしれない

そう思ったときには、すでに遅かった。





空が赤みをさしていて、夕日が地平線に消えていく。

頭上でカラスが「あほーあほー」と鳴いている。(被害妄想)

木の葉の情報を手に入れたい人たちは結構いて、この時間、特に女子供は誘拐されやすい。

嫌な予感がした。

シカマル、ナルト、サスケを呼び集め、彼らのひと時の冒険に終止符を打つ。


「そろそろ、帰るよ」


木々がざわめく。

嫌な予感は果たして当たった。


周りを6、7人の忍に囲まれた。


私は、目の前にいる子供たちを、再度確認するように右から順にゆっくり見てみる。





四代目の遺産人柱力、うちは家嫡男写輪眼、奈良御子息。 ・・・


・・・


・・・うわぁぁぁ、最悪だ。これ、死なせたら、真面目にやばい。


心の底での雄叫びを上げるのであった。







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Aランク任務を無事終えて、報告書を提出しようとしたらハヤテに呼び止められた。その足で、火影様の元に行く。


「雲隠れの里の雷影から連絡が入った。忍界大戦の時の恨みを持った抜け忍が木の葉周辺に潜伏しているらしい」


「そんな、いまさら」


そう言うのは、いつのまにか、隣にいたゲンマだ。


「恨みというものは、なかなか晴れることがない。その上、時代を超え受け継がれる。人数は7人、全て特上レベルだそうだ。カカシ、ゲンマ、ハヤテ、里に入る前に抜け忍を始末する様に」


三人は瞬身でその場を後にした。







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目の前にたちはだかる7人の忍。


いつの間に、現れたのか、見当も付かない。

ドベのナルトはともかく、サスケすら驚愕の表情を浮かべている。

額宛を見る限り雲隠れの者だ。レベルはメッチャクチャ高いと思う。

敵から漏れ出ているチャクラ量が半端なく大きい。戦って生き残れる可能性は0だ。


「火影のところに案内してもらいましょうか?」


「お前ら、何なんだってばよ。」


「火影暗殺が我々の目的だ。命が惜しければ、」


敵がみなまで言う前に、ナルトがクナイを振り上げようとし、サスケがそれを止める。


「な、サスケ、何すんだってばよ!」


「このウスラトンカチ、分からないのか。こいつらは下忍が4人でかかって、どうにかできる相手じゃない。」


「おや、木の葉にも賢い人間がいるようですね。今、その子が掛かってきたら見せしめに殺そうとしていたところですよ。命拾いしましたね。」


絶体絶命とはこのことを言うのだと思う。何の策も浮かばない、相手が強すぎる。

きっと、も後ろで怯えているはずだ。女は守るべきもんだと教えられてきた俺は、無意味ではあるが、彼女を庇うように背後に回した。


「さて、私たちは気が短いんですよ。案内、してくださいますよね?」


語尾が強められたと同時に強い殺気を当てられた。俺も一応優秀なルーキーであったが、明らかに経験不足だった。

俺たち三人はその場に尻餅をついた。体全体から汗が噴出し、動機がとまらない。


「おや、これは意外。貴方、本当に下忍ですか?」


敵の視線は真っ直ぐ、俺の頭上を通って後ろに向けられていた。


そしての声が聞こえた。





「多重影分身の術」


白い煙が舞い、浮遊感を感じた次の瞬間、俺は意識を手放した。







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「ゴホ、これは酷い」


「どうなってるんだ」


「パックン、何か分かる?」


パックンが察した抜け忍の居場所に駆けていったら、緑に覆われているべき大地の先には、焼け野原が広がっていた。残り火が最後の手がかりを灰に変えていて、これ以上の踏査を拒んでいるようにも見えた。


「わからん、敵の匂いが完全に途絶えている。だが、カカシよ、兎の気配がするぞ。アイツは一線を退いたのではないのか?」


「え?」


「兎って、何だ?」


「コホ、通称赤い目の兎、兎の面をした暗部ですよ。って、カカシさん?!」


周りの音が聞こえなくなった。

気づけば、灰が募って足場の悪くなった焼け野原を駆け出していた。彼女に会いたい。


ただそれだけを胸に抱いていた。







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散々な一日だった。


下忍の世話は大変だ。イルカ先生を含め、アカデミーの先生たちは、やっぱりすごい。(あらゆる上忍師の存在はスルー)


月が昇り、星が煌き、梟はホウホウと鳴いてその黄金の目を光らせ始めていた頃。


は奈良家の前にいた。インターフォンを、足の指で器用に押す。


「おー、ちゃん、シカマルを里の外に連れて行ってくれたんだってな。 サンキューな。 ・・・で、なんで、俺の息子を口で咥えてるんだ?」


シカクがそういうのも、最もな話で、はボロボロの姿をしながら、右腕にナルトを抱え、左腕にサスケを抱え、口にシカマル(細かく言えばシカマルの上着)を咥えていたのである。


シカクの前にペッと吐き出すように、落とすと、うめき声が聞こえてきたが 起きる気配はなさそうだ。

まあ、この際それはどうでもいい。三人が生きてるだけ儲けもんなのだ。


「おい」と非難するシカクには目を合わせた。


「ほんの少し記憶を操作しました。」


シカクは、その一言で全てを察したらしく、頷き苦笑をもらした。


なんだかんだいいながら、シカクにとって、は信用の置ける者だった。不必要な記憶の操作はしないだろう。


「に、したって、なんで、俺の息子が口なんだよ。こいつは奈良家嫡男だぞ。 もっと丁寧に運べなかったのか?利き手の右手に持つべきだろーが」


「右手には四代目の子、左手にはうちは一族の生き残り。申し訳ないのですが、お宅の息子さんは・・・」


ふうと、ワザとらしい溜息を付いて、は斜め下に目線をやった。


その夜、ガツーンと小気味いい音が、奈良家の玄関先に響いた。





本当に散々な一日だった。







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おまけ








挙仙術にも限界があったらしい。くのいちによるイジメとは段違いの怪我を負ったは、両手両足に包帯を巻いて、右目には眼帯を付けたのだった。


ーーーーーーーー!!!お前何したんだ!!」


朝、受付所に行くと、イルカが叫び声をあげた。


「アハ、転んじゃって、もうったらドジッ子さん。テヘ」


「テヘじゃないだろ!!どこで、どう転んだら、そんな有様になるんだ!!!」


特上レベル7人相手にしたらこうなるんですよ。イルカ先生。


「アハ、イルカ中忍ったら、おメメまん丸になってるー!かっわいいー!!」


イルカを適当に按排して、昨日の任務一覧と他里からの電報を見ていく。

岩隠れの里の抜け忍7名処分を雷影から頼まれていた。任務を担ったのは、はたけカカシ、月光ハヤテ、不知火ゲンマ。

は確認を取るとホッと一息ついた。殺してはいけない抜け忍も、ときたまいるのだ。

昨日が処分した者達はそうした類ではなかったらしい。


「あーーーー、姉ちゃん、酷い顔だってばよ!!」


「ナルト!!女の人に向かって失礼でしょー!!ねえ、サスケ君?」


「酷いのは顔だけじゃないだろ。」


「・・・はは、本当、そうねー。さすが、・・・サスケ君(あさっての方向を見ながら)」


無性に腹が立つんですけど、カカシ班。

昨日助けてやった恩をもう忘れたのか?って、あ、記憶操作したから、こいつら忘れてるんだった。





ガッデム!
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