兎シリーズ

始めは処女の如く、終わりは脱兎の如し : 始めはおとなしかったのが、終わりに近づけばだんだん勢いが増して抑えられない状態にまでなってしまう事。

浮気現場目撃っていうか






行きつけのラブホでばったり会った。






共に浮気相手携えて。









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カカシの連れ女は、かの有名なカカシの恋人である受付嬢をみると、

フッと誇ったように笑みを浮かべてカカシの腕に自分の腕を巻きつけたが、

「ごめん、帰ってくれる?」と突き放されると、舌打ちしてを一睨みしてから瞬身で消えた。




ちゃん、俺は任務だったんよ。ちゃんの方はそうでもないみたいだね。」

チラリとの隣で怯えている男に一瞥する。



「何、二股だったわけ?」



「二股なんて、そんな酷いっ。っ、不特定多数の人と関係を持ってるもん!」



彼女はフルフルと首を動かしながら、涙をため上目遣いで俺を見上げた。

この時、俺は、心底この女をぶん殴りたいと思ったのだった。









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任務帰りだというナルトとアカデミーの玄関先で出会い、話を咲かせ、なんやかんやで夕食を奢ってやることになって、一楽に訪れていた。

時計は9時を指していた。客は俺とナルトしかいなかった。


「こんばんは。テウチさん、味噌二つお願いします。」


「おう、あ、ナルトじゃねーか。お前昨日、金がないからって今日は来れないって言ってなかったか?」


「にししし、今日はイルカ先生の奢りだってばよ!!」


「先生も大変だねえ。肉多めに付けといてやるから、頑張れよ!」


「はは、ありがとう御座います。」


「え、俺もー、俺のラーメンにもー」



早食いのナルトが二杯目のラーメンを頼む頃、他の客がやってきた。

席を中央から右側に移そうと立とうと足に力を入れたときだった。

毎日顔を合わせている部下の声が聞こえてきた。


「きゃっ、イルカ中忍!!アハ、ナルト君も一緒だっ」

はナルトの隣に座りメニューを見る。その隣に、「里の誉れ」である上忍師が座る。

ああ、やっぱり、上忍すごい。出てくるオーラが違う。なんて、ミーハーな事を考えてしまったのは、俺がまだまだ若いと言う証拠だと言うことにしておく。

とカカシ上忍が付き合っているという噂は信憑性がなく、ガセネタだという人も多いが、

数ヶ月前からの業務終了をカカシ上忍が受付所の窓の外で待っている事から、恋人同士だということがわかる。

それに、カカシ上忍のを見る目は他の者に向けるそれよりも、ずいぶん優しい。


、お前、今日は経理部の人と打ち合わせがあったんじゃないのか?」


「うん!あのあと意気投合して、流れでラブホ行ったら、会っちゃって」


が指差すのは隣に座っている恋人のカカシ。



俺はブホッーと勢いよく、ナルトの顔面に口からラーメンをぶっ掛けてしまった。


「意気投合って!お前何考えてるんだ!!?完璧浮気じゃないか!!」



「テヘ」



いいのか、それで。「テヘ」で済まされるのか。あのカカシさんを蔑ろにするってそういう了見だ?!

心なしか、後ろにいるカカシさんは不機嫌だぞ。いや、無表情で分かりづらいが、かなり怒っている。


馬鹿ーと脳内ではエコーを飛ばしていた。



とりあえず、先生魂を奮って、精一杯のフォローを試みる。



「すみません。コイツ、悪気はないんですよ。根は良い奴なんですよ。」



「イルカ先生がちゃんの何を知ってるって言うわけ?」

「いえ、何も知りません。」



即答してしまった。

お願いですから、殺気しまってください。ナルトも怯えています!



「テウチさーん、は、ねぎ味噌ラーメンと餃子と半チャーハンで!!」



カカシ上忍の殺気が膨張した。、空気を読め!頼むから、読んでくれ!!

後に続く沈黙に耐えられなくなった俺はそうそうに引き上げることにした。

「俺たち、明日早いんで先に失礼します。カカシ上忍。じゃあな、。」

俺はナルトを掴んで逃げるようにその場を後にしたのだった。









*********











ああ最悪だ。

大人気なくも、イルカ先生やナルトに八つ当たりしてしまった。

隣で、先程の事など、そしらぬ顔でラーメンを食べている女を見ながら思う。


悪気がないだと、それこそ酷い話ではないか。


最近、この女によって心が蝕まれていくのをヒシヒシと感じる。


だんだん、その勢いが増して抑えられない状態にまでなってしまっている。


こんな筈ではなかった。


兎の彼女の姿を追っていただけなんだ。


兎とのささいな共通点があることを、見つけたのが彼女に接触する最初のきっかけとなった。


勿論、本気じゃなかった。
こんな馬鹿を象徴したような女、誰が相手をするんだというくらいの女、

・・・愛しく思う理由がない。 なんで、どうして、あの胸を焦がすような思いが蘇るのか、兎に向けられていた感情がこの女に向き始めている。


どうしようもない恋慕の情。

こんな筈ではなかった。




ああ、最悪だ。
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