「イルカ先生だけがいますよーに」と念じてから、受付所の扉を勢いよくガラッとあけた。
「おはよーございます!!」と元気よく挨拶してくれる
・・・ちゃんがいた。
「きゃっ、かわいー忍犬ちゃん!!」
兎と同じことを言わないでくれて、うれしいような、期待はずれのような、そんな矛盾した感情を抱いたが、それに蓋をした。
「あ、・・・よく、ペットじゃないって分かったね。」
「だってー、服着ているしー?」
何その偏見。君の頭の中では、服を着ていれば忍犬なわけ?
今時、ペットに服を着せるくらい普通よ?ってか、あの犬塚家の代表的な忍犬たちは服着てないし。
その固定観念は即刻捨てるべきだと思うよ?
そんな事を思っていたら、職務に忠実なパックンが思い出したように言う。
「殿、お主、匂いを消しておるが、何故だ?」
俺は、目を丸くしてちゃんをみた。心臓が早鐘を打つ。
「え、まさか・・・」
俺は忘れない、この時、自分の声に喜色が含まれていたことを。
忍者として恥ずべき希望的観測のもとに、自分になんとも都合の良い解釈をしようとした。
決して無いとは思いながらも、そうであれば良い。と、心のどこかで思っていたのかもしれない。
果たして、俺の妄想に近い想像は、空想と終わる。
「きゃー、わかるー?下忍で流行っているのー。体臭拡散防止玉っ!」
が、瓶詰めされた色とりどりの飴をパックンに見せる。
嫌な予感がした。
その後に続く言葉を聞きたくない。
「何じゃ、それは?」
「その名の通り、匂いを一切出さない匂い消しの飴ちゃん!結構、値は張るんだけどー、忍具よりお洒落? 女性としてのマナー、みたいな?」
今、最低な一言無かった?
何、この子、つまり支給されている忍具を質屋に売って、体臭を消すその怪しい飴玉を買ってるってこと? (よく訳せたな俺、凄くない?これぞ1を知って10を知るってヤツ?)
って、それ、忍としてのマナー違反だよね。いけないことだよね。
あー、・・・後で、火影様に報告しておこう。
いや、それよりも、おおきな問題がある。流行っているって言わなかったか、この子。
「でもー、最近はー、みーんな使っててー、、ビックリー」
「ちゃん、あのさ、因みに、みーんなって、いうと?」
「アハ、パンピー(一般人)から、くのいちまでっ」
何がアハなの?何が楽しいの?俺の今の気分、どん底なんだけど。
その夜、一晩中パックンがうなだれていた俺を慰めてくれていた。
手がかりゼロ。収穫ゼロ。行方不明の君。
実際、迷っているのは、君か、それとも・・・。