兎シリーズ

兎の角論 :無益でくだらない議論

ここは、木の葉の上忍が足茂く通う酒酒屋、いつもはうるさく賑わって収拾が付かない状態になるまで盛り上がるのだが、今日は通夜のように静かだ。



その原因は、カウンターで座り、昼から強い酒を飲み続けていた我らが「木の葉の誉れ」カカシにあった。



午前0時を回っても、その勢いはとどまることを知らず、酒酒屋の酒を全部飲み干してしまう意気である。

その両脇に、アスマと紅はいた。



「カカシ、もう、飲まない方がいいわよ。いくら、忍が酒に耐性があるからって、明らかに飲みすぎよ。アスマも何か言ってあげて。」




「いや、もっと、飲んで、前後不覚になるくらいが丁度いいんじゃねぇか?」



「って、煽ってどうするのよ!!」



アスマも紅が先程来るまでに、カカシに付き合っていたため相当の量を飲んでいる。



「紅は、あの場にいなかったから、わかんねぇよ。

いや、俺も、言ってる内容半分も分からなかったけど。(言語能力不足)

・・・やっかいな女に惚れたな、カカシも。あの女、何様のつもりか知らねぇけど、偉そうに・・・気にくわねぇ。」


「アスマ、彼女の悪口をいうな。」



無言だったカカシが低い声を出す。



「ちょっと、カカシお店の中で殺気なんて出さないでよ。」



「ベタ惚れか。まぁ、確かにあの女は魅力的だ。
暗部であったからか誇りや信念が垣間見えるし、凛とした空気を携えて、人を惹き付けるカリスマ性みたいなもんを持っているかもしれねぇ。
・・・だがな、あんな横柄な女より、の方がまだマシだぜ。」



「あら、アスマ、あの子のこと、散々馬鹿にしていたじゃない。どういう風の吹き回し?」


アスマから、脈絡も無く出てきた名前に紅は疑惑の目を向けた。


「おい、誤解するなよ。ただの、比較の問題だ。」

「極端な比較対象ね。まるで、電柱と電動歯ブラシを比べるみたい。」

「いや、何だ、その例え。」

「次元が違うって事よ。」

「ちがくなーいよ。ちゃんは、俺の彼女だもーん。」

カカシの言葉にギョッとする二人。

「ウソ!噂には聞いていたけど、ガセネタだと思ってたわ。」

「お前彼女いるのに、兎に告白したのか!?そりゃ、怒るだろ。 ってか、と付き合ってるって、お前、雑食もイイカゲンにしろよ。 人類最後に生き残った女がアイツでも、俺は絶対付き合わねぇーぞ」

「アスマ、さっきと言ってることが矛盾してるわよ。気付いてる?」

「ああ、わりぃ。そうか、それなら話は早い、を振ってもう一度兎に告白して来い。万事解決だ」

「アスマ、さっきと真逆のことを言っているわよ。分かってる?」

「いや、だってよ。阿婆擦れで馬鹿なよりも、一途で賢い女傑の方が良いだろ。普通。」


ゴンと紅の拳がアスマに落ちた。

「アスマ、手が滑ったわ。ごめんね?」

紅の行為に、今まで黙っていたカカシが口を開く。

「なーによ。紅はちゃん派なんだ?」

は、噂ほど悪い子じゃないわ。むしろ、見えないところで気配りができる良い子よ。


私が熱を出した時も部下たちのお守りを引き受けてくれたし、何故かそれ以来、皆私の言うことをちゃんと聞くようになったし。 だから、カカシ、遊びなら別れて。 あの子は根は真面目で、優しい、裏表のない性格をした子なのよ。」


…それは、夢見すぎだろ。
と、思ったカカシとアスマだったが、殴られたくは無いため、口には出さず心の中にとどめた。

酒酒屋の酒が底を着くころ、朝日が木の葉に昇る。

ちゃんか、兎か。…取捨選択なんてできるわけないでしょーよ。」

窓から見える綺麗な朝焼けがカカシの眼に染みた。






平衡のまま、決して傾くことの無い天秤。
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