畑シリーズ

山葵を利かせる



「その生命体の大きさから、妊娠二ヶ月だろう。」



独り言のように呟かれたイタチの一言は、まるで死の宣告のようだった。
望んだ奇跡はこんなものではなかった筈だ。







「命拾いしたな。」


それからしばらく放心状態でいたに最初に声をかけたのは意外にもそれまで彼女を敬遠していたサソリだった。あらゆる罵詈雑言が、の頭の中にかけめぐったが、口を開くことはせず、ただ空ろな目を向けるだけに留める。





命拾いだって?

冗談じゃない。


体だけじゃなく、脳みそも木か綿でできてんじゃねーのか?このすっとこどっこいが。殺されるに決まってるじゃないか!


他の誰でもなく、夫であるカカシに!


愛されているからって、驕ってはいけない。アイツはそんなに甘くない。イルカ先生風に言えば「やる時にはやる子なんですよー」ってヤツだ。「やる」は、勿論カカシが関わると漢字変換されて「殺る」になる・・・。
なんて物騒なヤツなんだ。



謝って済むような話ではない。夫婦の契りを破った時点で裏切り者になる。カカシが許すはずがない。


いっその事、責任は全てデイダラに押し付けようか。無理やりだったと言って、泣いて縋ろう。うん、悪くない策だ。


・・・いや、待てよ。幻術だって使えた。薬だって使えた。


チャクラを使えば、避妊の方法なんていくらでもあった。考えれなくても、体を許したことなんて、すぐばれる。げ、最悪。




これが、クイズ・みりおねあ(古)だったら、今すぐライフラインを使って、テレフォンで、シカクさんかゲンマを呼び出すし、オーディエンスで、一般的な意見だって聞けるのに。あー、でもフィフティ・フィフティは使えないか。これ以上選択肢を絞られたら自滅する。




現実逃避を経て、最終的に打ち出さした答えは、「隠蔽」だった。






不幸の種は、まかれた。
暁にいれば、芽を出すのは8ヵ月後。
木の葉に行けば、芽を出す前に摘まれてしまうだろう。

・・・が、ばれなきゃ良い。




万事上手くいく。
幸い、隠すのは職業柄得意だ。




















、俺はリーダーと今後について話し合ってから行くから、お前は旦那たちと先に行っててくれ。」


青い瞳が心配そうにの青白い顔を覗くが、彼女は俯いたままだ。イタチが彼女の腕を掴むと、彼について歩き出したが足元はおぼつかず、今にも転びそうだった。その後姿を見ながら、デイダラは泣きそうな顔をしていたのだが、それを知るものは只の一人もいなかった。









*********



























大蛇丸、綱手と並ぶ三忍の一人、自来也の尽力によって大蛇丸を退け、綱手が五代目火影に就き、里はやっと平静を取り戻そうとしていた。その矢先に、サスケが大蛇丸の部下である音の四人衆と接触し、大蛇丸の元へと誘い込まれた。


ナルト、シカマル、チョウジ、キバ、ネジの五人が、サスケを連れ戻すため音の四人衆と交戦し、砂隠れの助けもあって、全員を倒した。が、結局サスケと戦ったナルトは敗北を喫し、サスケは大蛇丸の元へいった。



「で、大人たちは結局何もできなかった。か。俺はお前をおぶって里に帰還。何よりも優先すべきはお前たちだったのに。」



ナルトを背負いながら、カカシは自分の不甲斐なさを恥じていた。里の命に背いてでもサスケを連れ戻すべきだったと、珍しく後悔していたのだ。白衣に身を包んだ医療班が彼の周りを囲むようにして移動するが、森の中ではいささか目立っていた。



木岐がざわめいたところで、カカシが静かに言った。





「ナルトを頼む。足止めは俺がする。」


「カカシさん・・・?」


「敵の人数は4人。先を急げ、全滅するぞ!」



救護担当の医療班は攻撃に弱い、その時実践で使えるものは一人もいなかった。クナイが飛んできたのは、それから数秒後のことだった。



凶器が飛んできた方を見ると、黒い下地に赤い雲模様替えがかれた外套を着た男が三人。そして、その少し後方に栗毛の女がいた。距離があり、しかも逆光で、その姿は漠然としか伺えなかったが見間違える筈がなかった。

カカシは息を飲んだ。

まさか、こんな形で再会しようとは思いもしなかったのだ。



「おやおや、これは奇遇ですね」


「暁・・・か」


「ほら、さん。前に出てはいかがですか。貴女の夫ですよ。よかったですね。感動の再会ではありませんか。」



青白い顔をした男が丁寧な口調で話し始めたが、今カカシにとって重要なのは彼の態度でも、暁の存在でもなかった。距離が縮まって窺う事が出来たの顔だった。生気のない、憂いを帯びた瞳がカカシに向けられていた。



、お前「サソリさん、イタチさん、ここは私に任せてください。」



カカシの言葉を遮って、鬼鮫は長刀を振りかざした。それを合図に二人は戦闘体勢に入り、激しい攻防が繰り広げられることになったのだ。サソリの薄ら笑いとイタチの大きな溜息が、後に響いた。




攻防は長くは続かなかった。もともと、カカシは連日連夜の任務で疲労困憊状態、万全ではなかったのだ。それに加えて、久しぶりに会えた妻の方に意識は注がれて注意力散漫。彼が勝てる要因は一つもなかった。




息を切らして、木の幹に体を預けるカカシを、彼よりも幾分か背の高い鬼鮫が見下ろしていた。勝負は決まっていた。鬼鮫も息を乱してはいたが、カカシほどではなかった。


低体温のせいもあってか、汗もかいていないようで、代わりにその顔には余裕の二文字が浮かんでいた。




「これが、写輪眼のカカシですか。あっけないですね」






小さく溜息を付くと、鬼鮫はカカシの首に向けて長刀を振り上げた





ザブザの仇である写輪眼のカカシを、ついに殺ることができると神経が昂ぶっていた。目の前の獲物に食いつくことに躍起になって、周りが見えなくなっていた。振り上げた長刀を下ろした、



その時だった。




ゴッと鈍い音がし、それと同時に右手に重みが無くなった。




「!!」



右手に目を走らせるが、それがない事に気づいて愕然とする。


血飛沫が辺りの草を汚していき、声にならない嗚咽が口から漏れる。

蹲りたい衝動にかられるが、歯を食いしばりなんとか意識を保つことに集中する。そして、今まで感じられなかった強大なチャクラの存在を認識した。いや、実際には感じていたし知ってもいた人物のチャクラだったが、その強さや禍々しさは全くの別物であった。




「そうよ。これが写輪眼。あっけねーもんなのよ。」



振り返ると、そこにはイタチがいた。

鬼鮫は全身から血の気が引いていくのを感じた。

信じられない光景が目の前に広がっていたからだ。



「・・・そんな」




彼の前にはイタチがいた。正確には、にクナイを突きつけられているイタチが、そこにいたのだ。



「因みに写輪眼は、繊細で希少価値の高いものだから傷つけないことを薦めるわ」


そう言いながら、自分はイタチの首にクナイを押し付けて、血を流しているのだから、説得力は皆無だった。


さん、貴女・・・」


開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろう。鬼鮫は茫然自失した。何が起こっているのかを正確に認識できず、サソリは一体何をやっていたのだと彼がいる方に目を向ける。



手にべったりと汗をかく経験など初めてであった。敵を目前にして後ずさるのも始めてのことだった。の隣には土遁で首さらしになっているサソリがいたのだ。


隙を付かれてどうしようもなかったのだろう。それにしても、惨めで憐れだ。やはり、表情は読めないがあれは相当頭にきているようにみえた。




「さて、取引だ」




彼女の声はこんなに低かっただろうか?
こんな、ドスのきいた声だっただろうか?

彼女の目は?
彼女の目に恐怖を覚えることが果たしてあっただろうか?


彼女は誰だ?



「・・・『赤い目の兎』」



地面にその身を埋めていたサソリが小さく呟き、それは鬼鮫の耳にまで届いた。


そうだ、何故気づかなかった?
情報は握っていたはずだ。
侮っていた。木の葉の忍びを!




「なーに。深く考える必要はない。私が写輪眼を2個、お前が1個持っている。」



彼女の作った空気に飲み込まれる。

王の前で兵士は、ひれ伏すしか選択肢が与えられないように、彼女の威厳はおかされることのないようなもので、底なしの恐怖を覚える。




「2−1=1、お前らには1多くあまるわけだ。悪くない話だろ?」



デイダラは、とんでもない爆弾を抱えていたようだ。彼が抱えていた物の中でも、一等最大にして最悪の爆弾だ。




「アカデミー生でも分かる引き算だ」




その場がしんと静まり返った。










この時、項垂れたのは間違いなく木の葉出身の写輪眼所有者たちだろう。
























が本性を現した時点で、任務終了は決定していた。暁への諜報活動の終了と同時に、カカシと帰還することが彼女の最大の目的になった。形勢は逆転したかのように思われた。少年のように明るいアルトの声を聞くまでは。




「なんだ?血なまぐさいぞ。・・・うん?」




の後方、森の中から姿を現した青年が、

暁に希望を、
木の葉に絶望をもたらす。






「デイダラ、その女は『赤い目の兎』だ!生かしておくな、殺せ!」





サソリは叫び、鬼鮫は右手を包帯で巻きながらデイダラの登場に安心を覚えた。暁にとっての最悪の事態は免れたのだった。




最悪の事態を迎えようとしているのは、今度は木の葉の番だった。

しかしながら、人の話を聞かないデイダラは普段から周りが何と言ってようとしばしば無視していたが、それはこの時も例外ではなかったらしい。彼の耳は同僚に傾けられることは無く、彼の意識は一人の女に捧げられていた。デイダラはと目が合うと、目を輝かせ抱きつかんばかりに近くによっていった。




「あ、!お前、無事だった・・・か?うん」




が、5メートルほどの距離を残して、立ち止まった。否、立ち止まらずを得なかった。がクナイを投げてきたからだ。


「それ以上近づかないで」



の低い声を聞き、初めてデイダラはこの状況を把握した。目の前には人質になっているイタチがいて、その近くに頭を地面から出しているサソリがいて、遠くはなれたところに右手を失った鬼鮫がいる。

そして、その隣には銀髪を携えた二枚目の男が木の幹に寄りかかっていた。
デイダラは、その光景を見て目を細めた。




「・・・はたけカカシ」




それは疑問ではなく確信に近い呟きだった。




「そういうことか。そうか。うん」



絶体絶命のピンチとはこのことを言うのだろう。イタチを縛っている紐に流すチャクラ量に限界を感じてきた所ではイタチを放すると、瞬身でカカシの元にいき、近場にいた鬼鮫を足でけり倒し、カカシを庇うようにして構えを取る。




次の作戦を脳内で打ち出しているが、生憎、人数、力ともに不足している。

瞬身で移動できる距離も負傷したカカシを抱えながらでは、限られていた。しかし、手段を選んでいる暇も無ければ、選ぶほどの手段も無かった。




カカシに抱きつくと、そのまま印を組んだ。




ボフンと気が抜けたような音がし、張り巡っていた緊張の糸は切れ、あたりは静寂を取り戻した。デイダラは、はと我に返るとすぐに駆け出した。



「イタチは、旦那と鬼鮫を頼む!木の葉の後始末はオイラがやる!」


イタチは、とカカシの後を追うデイダラの後姿が、自分と重なるように思えて仕方が無かった。切なさと愛しさとが混ざり合って、憎しみに変わる。暗部時代、彼女に寄せていた思いと全く同じものをデイダラが抱いていることに不快な親近感と、同情を寄せた。


















カカシを担ぎながらの道中は、想像よりもはるかに厳しく、何度も挫けそうになった。



「頭痛、息切れ、動悸には・・・養命酒だっけ」


「ちょ、、大丈「ファイトー!一発おろなみんしぃ、あれ、これって、りぽびたんAだっけ?」



ぜぇぜぇと、肩で息をしながら森を走り続けるが、の限界は近かった。(いろんな意味で)



、お前だけでも、里に戻れ。このままだと二人ともダメになる」



カカシと、里にとってどちらの方が有用であるかは、一目瞭然で、写輪眼という血系限界の価値や、子供を多く残すことが可能な男子として性的に有利であることを考慮すればカカシの方が比重が大きくなるのは当然のことだった。


里の意志は、自分の意思。


迷うことなど無かった。どちらか一人助かることが出来るのであれば、優先すべきは彼しかいないのである。



「そうね、それは避けよう」



担いでいたカカシを下ろして、は大きく一息ついた。カカシも安堵の表情を浮かべて、に優しく微笑みかけた。


に、最期に会えて良かった」



の顔に手をあて優しくキスをする。腰に手が回ってきたことに気づいてもカカシを抱き締めかえす。そして、そのまま最大限の挙仙術を使い始めた。



「!!、お前何やってんの!」



「帰還するのは、カカシよ」


カカシにはどうしようもなかった。止めたくとも止められない。力がみなぎるのを感じるが、全くうれしくはなかった。のチャクラを移してもらっているのだ。


「やめろ!」


何度もカカシは拒否したが、そのたびにのチャクラが散乱し、の体力を奪っていくので、次第にカカシは抵抗もしなくなった。体が楽になったと感じ始めた頃、急にガクリとが地面に伏した。




!!」



息が薄く、顔は真っ青で、まるで死人のようだった。



「カカシ、行け」




小さい声だったが、逆らってはいけないような絶対的な命令のように聞こえた。



「・・・無理言うなよ」



けれど、従える筈がなかった。彼女は、カカシにとって、ただの先輩でも、同僚でもなかったのだから、彼女は唯一で最高の妻だった。特別で、代えのきかない人間だったのだ。彼女の口からは弱弱しい息しか出ず、文句さえ口にすることが出来ないほど体も弱っていたが、目だけは今にもカカシを射殺さんばかりに光っていた。


「早く行け」とその目が訴えていた。



カカシが行動を起こさずに、そのまま時だけが流れた。




!!」





その静寂を破ったのは、またしても、デイダラだった。











カカシはを抱いて、デイダラから距離を置き、戦闘態勢に入ったが、
デイダラが発した次の言葉に目を剥いた。




、大丈夫か?」



は歯を食いしばり、カカシの肩を掴んで立ち上がると、デイダラを真っ直ぐ見た。彼女は自分に対するデイダラの想いを知っていた。

そして、自分が「赤い目の兎」だとばれているとは思わずとも、それに近い地位にいるだろうと彼に悟られていることも知っていた。何度か殺気を向けたのだ。

暁のメンバーなら分かっただろう。自分が只者で無いということを。
それでも、彼は自分に好意を寄せた。隣に置いた。愛した。


それが、彼女の最後の砦だった。

の奥歯には、強力な起爆石が埋められていて、チャクラを少し流し込むだけで自爆できる仕組みになっている。

これは、情報漏洩の予防策と自爆テロの要素を兼ねそろえていて、一時期は木の葉の忍び全員に付ける義務があったが、太平の世となった昨今は、人道的な立場から廃止された代物だった。



はっ、明日の新聞の一面はもらったな。『森の中の悲劇、痛ましい一家心中』そんなことを、腹を優しくなで自嘲気味に考えた。




。旦那たちが、お前の死を望んでいる。けど、うん、オイラは、・・・お前が死んだら、嫌だ。お前が死ぬ時は、オイラが死ぬ時だろ?」



「無理心中でもしようってーの?」




は額に汗を浮かべながらも、薄く笑みを浮かべて、デイダラに言い放った。


この会話で二人がただならぬ関係であると悟ったのはカカシで、ただどの程度の関係であるかを理解できないだけに眉を顰めた。

この金髪の青年のに対する好意は見て取れるが、それに対する彼女の態度は一体なんなのだろうか。青年が他の暁のメンバーと違って、彼女の正体に動揺を見せていないのが、何よりもカカシの不安をかきあげた。



カカシが不躾にデイダラを見ていると、デイダラがそれに気づいて顔を向け、その時互いに始めて目が合った。




「お前が、はたけカカシだな」



「そういうお前は誰だ」



「オイラは、のおな「カカシ!目と耳を塞げ、これから入ってくる情報は全て嘘だ。」




デイダラの話を遮って、は出来うる限り声を張り上げた。血の気の無い顔が、さらに白くなっていく。



「なんかの忍術か?」



「アア、下手すると忍術以上にやっかいな」



カカシが神妙に聞き返すが、から漏れるのは、どちらかというと緊張感ではなく焦燥感で、それは不信感をあおるものだった。そして、次のデイダラの発言が、その場の対人関係を大きく変えることとなった。






「オイラは、のお腹にいる子供の父親だ!」








深い森の中、冷たい風が音をたててカカシとの間を通り抜けていった。




「・・・落ち着け、カカシ。同胞殺しは重罪だ。」



、言い訳は?弁解なら聞くよ?」




「ちょ、待て、早まるな。身内殺しは極刑だぞ。」




クナイを突きつけてくるカカシを必死に説き伏せるが、言い訳すら浮かばず、撃沈。この時、彼女は切実に気絶したいと思ったのだった。


果たして、彼女の願いは聞き入れられた。その数秒後、チャクラ切れと体力の消耗から彼女は意識を手放したのだった。 そのまま顔面から倒れそうになったに二つの手が差し伸べられた。一つはカカシの、もう一つはデイダラのそれであった。


二人は顔を顰めて睨み合うが、殺気は決して出さず、口を開くことも無かった。ただ、互いに非難の目を向けるだけであった。


先に沈黙をやぶったのはデイダラだった。



「暁で子供を育てることは出来ない。うん。それがリーダーの最終的な判断だったんだ。」



その声は小さく、自信に満ちていた先程までの論調とは打って変わり、尻つぼみになっていた。カカシがデイダラの顔を見て一瞬泣いているのかと思った程だ。



デイダラは、掌で粘土をこね始めて、大きな鳥を作り出し、その上にカカシからをぶんどり、そこに丁寧に横たえた。




そして、の栗色の柔らかい髪を樋で、目を細めた。





それは、まるで儀式のようで、カカシは何もできなかった。





ただ、切なく、悲しい想いだけが伝わってきて、それは自分がかつて体験したことのあるものだったから、なおさら胸が痛んで、・・・泣きそうになった。



それから、どのくらいたったのだろうか、すくっとデイダラは立ち上がってカカシを睨みつけた。



「乗れよ。が死んだらただじゃおかないからな。オイラがお前を殺す」



粘土で作られた鳥を指差し、不機嫌そうに言い放った。一瞬、戸惑ったカカシだったが、選択肢が無いことを改めて認識すると大人しく鳥に乗った。土色の鳥は人間の10倍ほどの大きさで、羽を伸ばすと2倍以上の大きさになった。


飛びたつ、その瞬間だった。



デイダラが声を張り上げた。






「勘違いするな。本当にを愛してるのは、オイラだ!



だから、お前に渡したことにはならない!



覚えとけ。



奇跡を起こしたのは、お前じゃない!!



オイラだ!」







胸をえぐられたような気がした。
個人的に殺意を抱いたのは初めての経験だった。










膨張する怒りと憎しみ。

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