コレ、死亡フラグですか?
あれから、ヒソカの夕食を作って風呂に入れて寝させた。そして、一夜あけた。
私は未だリビングルームで一人黒ずんだ名刺を睨んでいた。
目の前には寝ぼけ眼でこちらの反応を伺っているパジャマ姿のヒソカの姿がある。
ああ、電話?するわけないでしょ?できるはずないでしょ?
関係者って言っても、ゾルディックだよ?同姓同名でも縁起悪すぎる。
彼を引き取ってもらう前に、こっちの命が引き取られるわぃ!
「怪我が治るまで面倒を見て、それから自分で帰ってもらおう。うん」
「なんで、面倒見るの?」
それはね、もう後に引けなくなったからだよ。
「何で電話しないの?」
それはね、もしかしたら、あのゾルディック家に繋がっちゃうかもしれないからだよ。
ソファに寝ている男の子を横目で見て、溜息を付く。濡れタオルで体と髪の毛を簡単に拭いてみれば、綺麗な顔が拝見できた。それは、もう食べちゃいたいほど、かわいかった(一人で興奮しているとヒソカに変態っぽいって言われた)
漆黒の髪の毛は、おかっぱのように切られていて、ゾルディック家5男坊のカルトを連想させるが、
服は黒く、着物ではない。
大した外傷は無いので、気絶しているだけなのだと思ったが、
オーラが乱れているだけで時機に回復するという仮説をヒソカは打ち出した。結局彼が起きない限り、何も分からないのだ。
・・・念能力者の遭遇率が高いのは私の気のせいですか?
長い睫がぴくと動いたのを確認して、近くに寄ると、黒い瞳と目が合った。
「起きた?」
「ん、母さん?」
やべ、キュンとした。今、キュンとした。パシンと物騒な音がして現実に戻された私は、今起きたことの状況を把握して唖然とした。
子供とは時に予想外の行動をする生き物だ。ヒソカが、男の子の頬をひっぱたいていた。
・・・。
「ええええええ、ちょっ、何してんのぉぉ!!!」
「寝ぼけているっぽかったから、覚ましてあげたの」
さも当然のように言ってるけど、違うよ、おかしいよ。怪我人相手にビンタ食らわす人間がどこにいるって言うのよ。あ、ここにいたか。
私がつらつらと今後の彼の教育方針について考え始めている、
一方で、室内には険悪な雰囲気が立ちこんでいた。おかっぱの子が立ち上がり、ヒソカを思いっきり睨みつけている。
「君誰?」
「ボク、ヒソカ。君こそ誰?」
「イルミ」
私は、ほっと胸なで下ろした。なんだ、この名詞は彼自身のものだったのか。
いくらHUNTER×HUNTERの世界だからって、人物まで一緒とは限らないし、
あのイルミ=ゾルディックとの遭遇率なんて0%に限りなく近いのだ。
ゾルディックと言う苗字だって珍しくないものなのかもしれないし、
そもそも原作に出てきたイルミは成人男性だ。
私は無意味に怖気づいていた自分を恥じた。
「が怪我している君を此処に連れてきて介抱したんだ。もう歩けるなら、出てってよ」
子供は、語彙力が無いから稚拙で単純な言葉を選ぶ。
それは、総じて直接的で、時に暴力的に聞こえる。ヒソカの不機嫌そうな声に一瞬怯みそうになったが、ここは世話係として彼を諌めなければいけないだろうと思い直し、声をかけようとしたその時だった。
電気が全身に駆け抜けるような感じを覚え、とっさにヒソカとイルミを抱き締めて地面に伏せた。
直後、ガッシャーンと耳の鼓膜を破るほどの音がし壁も崩れたのだろうか、煙が舞い地面が揺れ振動が体に伝わる。
何が起こったのかわからないが、分からないからこそ冷や汗がダラダラ流れる。
抱き締めていたイルミが口を開いた。
「親父」
振り向いた先には長い銀髪を携えたガタイの良い男性が立っていた。
私がヒソカとイルミを背中に預けているのを見ると、状況を把握したのだろう、男は笑った。
「息子が迷惑をかけたようだな」
「本当に迷惑」
「ヒソカ!すみません。普段は大人しい子なんですけど、昨日寝不足で苛立っているんです」
ヒソカに睨まれたような気がしたが、目の前にいる人間は堅気じゃない。
此処は穏便に事を運ばないと、ヒソカの命も危ない。
なるべく、笑顔で取り繕うが、果たして、ちゃんと笑顔になっているだろうか。
「くっくっくっ、面白いな。お前たち念が使えるのか」
「当たり前。念も使えなくて、この町では生きて行けないから」
なるほど、だから、念能力者との遭遇率が高いのか。
ヒソカの言葉に納得して頷くと、目の前に立つ男は更に大声で笑い始めた。
近所迷惑なんですけどと、さりげなく注意を促せない私は、地域社会で生きていけない気がする。
「気に入った。お前ら、名前は?」
「ヒソカ。彼女は」
「よし、ヒソカ、。お前らちょっとうちに来い。」
よくわからない展開に唖然とするが、我に返って首を横に振った。
それでも、私の意志など関係ないらしく私の腕を掴み、家の外に連れて行き、車の助手席に乗せられた。
ヒソカといえば、後部でイルミとじゃれあっている(喧嘩しているとは決して認めない)
腕を掴む手を振り払いたいが、ものすごい力で掴まれているものだから、どうにもならない。
諦めて、座席に背中を凭れさせると、彼は勝ち誇ったように笑った。
「因みに俺の名前はシルバだ。シルバ=ゾルディック」
コレ、死亡フラグだよね?