実はヒソカの家はククルーマウンテンから、そう遠くない。車があれば、1時間以内で行ける距離だった。
朝早い時間帯だ、車はラッシュにも巻き込まれずに快調に進む。
朝日が眩しく感じられたが、実際問題明日拝められるかどうかも分からない状況だ、
ありがたく目に焼き付けておこう。あ、なんか、目頭が熱くなってきた。
車が止まり、降りてみると例の門の前だった。
そう、目の前に立ちはだかる門は十中八九「試しの門」だろう。
シルバさんの後をイルミ君が歩いていく、確か私の記憶が正しければ、最低でも4トンある扉。
それを普通に開けて中に入って行った彼らは、自らを人間と名乗ってはいけないと思う。
彼らが扉に消えていったのを見届けて、ヒソカに声をかける。
「よし、ヒソカ、帰ろう。」
確か、此処は観光地でバスが出ているはずだ。
ポケットに財布も入ってる。
OK、準備万端だ。
ヒソカの手を引こうとしたが、肝心の彼の姿が見えない.
首をかしげて周りを見てみるが、人っ子一人いない。
「ヒソカ?」
「、早く!!」
嫌な汗が流れる。ヒソカの声が扉の向こうから聞こえてきたのだ。
いや、まさかそんなはずは無い。彼は確かに念能力者だが、普通の枠を超えていない筈で、そんなに強いわけがない。
「先行ってるよ」
いやいや、だめだって、悪の巣窟だから!そこ。私は慌てて扉まで走った。
勢いに任せて、扉を押したら・・・って、あれ?案外簡単に入れた。
なんだこれ。
H×Hはフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありません
ってヤツ?
いや、なんだよ、そういうことなら先言ってくれよ。拍子抜けした。
待たせていた三人に軽く会釈して、その場を和ませるが、なんか空気がおいしくない、
というか、ぴりぴりしている。
「強いとは思っていたが、ここまでとはな。連れてきた甲斐がある」
盛大に笑うシルバさんの横で、すんごい目つきで睨んでくるイルミとヒソカ。
「親父、7の扉って256トンだよね?」
「ボクだって、4の扉までしか開かなかったのに」
「・・・」
なるほど、私は、自らを人間と名乗ってはいけなくなったらしい。
門から家までの距離は相当のものだったが、家に入り奥のリビングルームに付くまでの距離もべらぼうに長かった。
城のように広くて大きく少しばかり派手な佇まいだが、白を基本にした調度品は品が良く、
小洒落たインテリアも好感が持てた。
リビングルームに通されると、楕円状のテーブルの上座に優雅にティータイムを楽しんでいる女性を発見。黒くて長い髪が白い顔を彩立たせ真っ白なドレスに身を包む彼女は、赤ん坊を抱いて微笑んでいた。真っ白な顔に塗られた真っ赤な紅が魅惑的な弧を描き、真っ黒な瞳がを捉えた。
「あら、貴方お客様?」
シルバは上着を執事に預けるとその女性の隣に座った。
「妻のキキョウだ。キキョウ、彼女はで、隣にいるガキはヒソカだ。イルミが一晩世話になったらしい」
シルバが妻といった人は到底漫画に出てきたキルアのお母さんと同一人物には思えなくて、は目を見開いた。
あの仰々しい包帯の中身はこんなに綺麗な顔が隠れていたのか。
「いえ、大してお世話してませんよ。ね、イルミ君?」
「うん、起きた途端に殴られて出てけって言われた。」
部屋の中の空気がピーンと張り詰める。
ちょっ、待て、それは私の所業じゃない!それはヒソカがやったんだよね? なんで、いかにも私がやったみたいに語るの?この子、頭オカシイよ!親の顔が見てみたい!
シルバさんとバッチリ目が合い、顔を俯かせる。
・・・えっと、止められなかったのは保護者の私だから、やっぱり私の責任かもしれない。うん。
そうかもしれない。イルミ君は間違っていないかもしれない。てか、心臓バクバクしてきたかもしれない。
「オーホホホホ!ユニークな方を連れてきたのね」
「、適当な席に付け、もう昼飯の時間だ」
あ、知ってる。それ、あれでしょ。毒入りの昼ごはんでしょ。
「さんっておっしゃるの?ヒソカ君はイルミと同い年のようだけど、八歳くらいかしら。」
「あ、はい」
「さんと私も丁度同じくらいの世代になるのかしらね。」
「はあ、たぶん」
「私前から欲しかったのよ。ママ友達。」
・・・。
いや、ママ友って、なんか、公園のベンチに座りながら砂場で遊ぶ子供たちを見守りつつ世間話に勤しむ人たちのことだよね?
無理だって、キキョウさんと私の世間って全然違うよ。話が通じないよ。
「みれば、ヒソカ君もイルミと同じくらい強いようですし、将来が楽しみですわね。 私はそう。貴方たちのような方々と会いたいと思っていましたの!」
私はできれば、お会いしたくありませんでした。
イルミ君は確かにかわいいし、くりっとした愛嬌のある瞳は
ヒソカのそれとはまた違う魅力を持っているけれど、
こんな物騒な家族と交流したいとは全く思わなかった。
ヒソカの隣の席に着いたイルミ君を、ヒソカ越しに見るとタイミング悪くも目があい、
私は口を引き攣らせた。
「何?」
「いや、綺麗な黒髪だなと、思って」
「俺は親父と同じ銀色が良かったけど・・・」
「でも、伸ばすんでしょ?それ」
「え?」
そうだ。冷静に観察していなかったが、イルミ君もヒソカに引けを取らないくらい整った顔をしていた。
黒い大きな目が人を惹き付け離さない。漆黒の髪は手入れをされているようで艶があり綺麗だ。
H×Hを読んでた時は、殺し屋の癖になんで、ロン毛なんだ!
(殺し屋=ゴルゴ13のイメージ)って思ってた時もあったけど
これだけのものなら伸ばしたいだろう。
「うん。将来有望だね」
ザクリ
私が声を発した後、不吉な音と共にイルミ君の髪の毛が空を舞った。
パサパサと軽い音を立てて、地面に舞い落ちる黒髪と、構えを取っているイルミ君、
ナイフを持っているヒソカの姿に目を剥く。
・・・。
ええええええ!ちょ、なにやってんの!
「ヒソカ!!!!」
「ほう、イルミと対等に渡り合えるどころか、 それ以上の力を持っている子供がいたとはな。脱帽だ」
感心するシルバに安堵の息をつきながらも、はヒソカからナイフを取り上げ、二人の子供を引き離して座らせた。
キキョウの甲高い声が辺りに響いた時、は死を覚悟した。
「まあ!まあ!まあ!イルミを刺そうとするなんて!」
頭を下げた瞬間耳を疑うような言葉が発せられた。
「あ、あの、本当にすみま「おほほほほほほ!お宅の家庭は素敵な教育方針だこと!!!私も見習わなければいけませんわ!!!」
ええええええええ!そっち?!
違うって!私、そんな物騒な教育方針たてないし!
頭が真っ白になっている、その間にも着々と食事の用意は進んでいった。
運ばれてきたジュースにヒソカが何度か手を付けようとしたが、コップに触れる前に叩き落とす。
彼が怪訝そうに此方を伺うが気にしない。脳内ではどうやってこの場を穏便にやり過ごすか、作戦会議中だ。
「・・・あの、すごく言いにくいんですが、私たち、用があってすぐに帰らないといけないんですけど」
「・・・用」
ヒソカが何か口を挟もうとしたので右手で彼の口を塞ぐ。
ゾルディック家でランチなんて冗談きつい。勘弁して。
シルバさんには眉をハの字にして、謝罪を入れた。誠心誠意謝れば、見逃してくれる筈だ。
「そうか、じゃあ、そっちはキャンセルしてくれ。悪いな」
・・・現実はそんなに甘くないらしい。
料理が運ばれてきて、執事が今日のメニューについて語る。テーブル上に並べられた料理は天下一品もので見た目からは文句の付けようもないが、
取り皿が渡された時点で、ゾルディック家の人たちと同じものを頂くということが分かり、
つまり、客用に毒抜きの料理を用意するつもりがないことも同時に知れた。
もう、選択肢は二つしかなかった。
黙って料理を食べて、毒殺されるか。
「毒抜きしてください」と言って、不審人物扱いされて殺されるか。
・・・。
ヒソカ、ごめん。
私たち、たぶん死ぬと思う。