有為転変

13 / 不即不離


結局、食事には毒が入っていなかったのだろうか、ゾルディック家でのランチは無事に済み、私とヒソカは無事に帰宅することが出来た。帰る際、キキョウさんには「また遊びにいらしてね」と言われ、顔が引き攣ってしまったのは仕方がない。「またな」ってシルバさんに言われて、一歩後ずさってしまったのも、まあ仕方のないことだろう。

それでも、じっと私を見ていたイルミ君と目が合って、ごまかすように笑い、 「イルミ君も暇になったら、うちに来てね」と言ったのは失敗だっただろうか。


常識のある大人として社交辞令はかかさなかっただけだが、こくんと頷くイルミ君を見て、前言を撤回したくなった。





しかし、実際にはイルミ君が家に来ることもなく何の音沙汰もなく日々は平和に過ぎ去っていった。 それは私にとっても、ヒソカの教育にとってもいいことに思えたし、できればこのまま何もなかったようにしたかった。







時間が緩やかに過ぎる午後4時。洗濯をたたみながら、私は暇そうにしているヒソカに声をかけた。



「ヒソカ、暇なら夕刊取ってきてくれる?」


「うん」



ヒソカは大人の言うことを聞くとても良い子で、我が侭を言って私を困らせたことは一度もなかった。 子供なんて生まれてこの方、産んだことは勿論のこと、 接する機会もなかった私にとっては非常にありがたいことだった。




最近めっきり外出が減ったヒソカのお気に入りはソファで寝転ぶことだ。 その間、目を細めて、私をずっと見ている。

こっちとしては行動を冷静に観察されているようで、落ち着かないが、 まぁ、ヒソカが家にいたほうが私としても安心なので文句は言わない。


学校に行かないというか、行けないヒソカのために、いくつか本を買ってきて読んであげようとしたが、 彼の方が朗読は上手く(ハンター語は難解だ)、結局は私が聞き手に回るのであった。
基本的に頭は良いようで算数も理科もすぐに理解を示したし、 ちょっと困らせてやろうと数学の問題を出してみても、簡単に答えをはじき出した。

この子は天才です!

と、どこぞの親馬鹿のように世界の中心で叫んでみたかったが、ちょっと恥ずかしかったので慎んだ。



、郵便物も入ってた」


「ん?」


「イルミのお父さんからだよ」


「・・・」



長方形の白い箱を手に持つヒソカを見て固まった。なんですって?




「ボクが開けても良い?」




ヒソカが期待に満ちた目でこちらを見てくるが、私は首を思い切り横に振った。将来のある彼にそんな危険を冒させるわけにはいかない。 万が一にも、爆弾が入っている可能性がないわけでもない。 いや、ゾルディック家も暇ではないから、そんなことしないとは思うけれど、あれだ。 人間と言うものは何でも最悪を想定し、最善を尽くさなければいけない。


残念そうにヒソカが箱を床に置くのを見て、悪いことをしたなとも思うが、私も世話係だ、 彼を今死なせるわけにはいかない。




恐る恐る箱に近づき、とりあえず、箱に耳を当ててみる。

うん、音はしない。

時限爆弾ではなさそうだ。


ほっと息をつく間もなく、インターホーンがなった。






「ヒソカ、出て。私はとりあえず、爆弾処理班になるから。 時限爆弾じゃないって事は、きっと空けた瞬間に爆発するタイプだよ。これ絶対。うん」


白い箱を睨みながら言い放つ。 爆弾ってどうやって処分するんだろう。 とりあえず、パソコンを立ちあげて、電脳サイトを捲ってみれば、何かしら情報があるかもしれないし、 自分で解決できなさそうだったらニコラに頼もう。

そんな思考が私の頭の中を支配していた。






「爆弾が入ってるの?」



「なわけないでしょ。、何やってんの?」



ヒソカ以外の声を認識して、意識を現実に戻したは、目を剥いた。



「イ、 ルミ、君・・・?」


「久しぶり、


「あ、うん。久しぶり」




イルミはの目の前にあった白い箱をパカッと開け、中身を取り出した。



「何それ」「着物?」



ヒソカと私の声がかぶったが、そうか、ヒソカは着物を知らないのか。


原作だと幻影旅団のマチやイルミの弟が着ていたが、この町ではあまりお目にかからないものだった。

それは浅葱色の上質な布で誂えられた着物で、一瞬で人の目を奪うような気品さを兼ね揃えている代物だった。



「この間のお礼。がジャポン出身者だから着物を選んだんだ。色は親父の趣味。」



「え?いらない!」



あ。やば。口が滑った。



「一応着てみてよ。まあ、俺もこの色はにあわないと思ったんだよね。」



いやいや、色の問題じゃないから!お宅の家業、殺し屋でしょ?これ、人を殺したお金で得た着物でしょ?!そんな服いらないよ!


、着てみてよ。ボク見てみたい」



ヒソカが目をキラキラさせて、そんなことを言った時は驚いた。

純粋に驚いた。


それはヒソカからの初めてのオネダリだった。(あ、なんか、この表現卑猥だな・・・)


子供の願いは出来る限り叶えさせてやりたいと思うのは、親の心だろう。 私も、ヒソカの期待を裏切ることは出来なかった。 普段我が侭を言わない彼の要望は出来る限り答えてやりたかったから。













自分の部屋に行って、成人式の時の記憶を寄せ集めてなんとか着てみる。 うん。後ろのリボンは歪なものだが、どうせ子供たちには分からないだろう。約一名は、今日まで着物の存在すら知らなかった人間だ。

大丈夫。

部屋を出て、リビングでトランプをしていた二人に声をかけた


「どう?」


ヒソカは声に反応すると、トランプを蹴散らして立ち上がってのところまで駆けてきた。そして、目を大きく開けて興奮気味に叫んだ。



!かわいい!」


「いや、ごめん。ヒソカの方がかわいい。食べちゃいたいくらい可愛い。」


誤解がないように言っておこう。私はショタコンではない。 私の言うことがいまいち理解できなかったのだろう。ヒソカは小首をかしげた。イルミは散らかったトランプを片付けながら、の着物に対する評価を述べた。



「うん、似合うね。ただ、やっぱり色がよくないし、動きづらそう」



動きづらいって・・・、イルミ君。君は着物に何を求めているんだ?











この日、は、こんなに高価なものはもらえないよと突き返した。

数日後、また着物が贈られてきた。しかも複数。 普段着用の着物でそう値が張るものではないらしいが、こちらとしては受け取りたくない。 しかし、二度も突き返すのは失礼だろうし、角が立つということで素直に受け取った。


添え状には「似合うと思う。毎日着てくれ」と一言つづってあり

着ないと殺すみたいな、印象を受けた(被害妄想)




よくよく見てみると、原作のマチの着物と全く同じ型で、これには本当に驚いた。
なんだ。これ。コスプレか?





ヒソカには「似合ってるよ!」と言われたが、たまに鏡に映る自分を見て無性に落ち込む時がある。




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