正しい念教育について深く考えてみたいと思う。
ヒソカの念能力が馬鹿みたいに高いと言うことが、先日ためしの門で証明された。人よりも高い能力を持っている人間は、人よりも悪の道に引きずられる可能性が高い。
高い才能に群がり、利用しようという人が出てくるのが世の常だ。何はともあれヒソカをそんな道に落とすわけには行かない。
「ってことで、ニコラ。暇ならヒソカに念能力の指導を行ってくれない?」
ニコラは、ヒソカの生存状況を確かめに週に一度定期的に家にやってくる。
今日もいつものようにヒソカの様子を見に来ていた。
季節は夏、彼のプラティナブランドが光に当たり、いつも以上に煌いている。
灼熱の太陽にギブアップ状態の死にそうな私とは違い、今日も朝から美しくて生き生きしている。
切れ長の目は、どことなくヒソカのそれを思い出させるが、
私より背が高く肩幅も広い彼は「異性」を感じさせ、どことなく色気がある。
うん、格好良いな。目の保養だ。でも、忘れちゃいけない。
彼はゲイだ。
いや、論点を戻そう。
とりあえず、ヒソカの念能力の開発?について要点をまとめて話してみたつもりだが、彼は眉を顰めた。
「別に、彼が大人になる予定はないんだから必要はないと思うけど、ただ、
そうね。最近良く見る黒髪の男の子・・・、えっと、イルミだったかしら。
彼の影響でヒソカの念も強くなってきてるし、街中でも目立つようになってきてるから、
変な輩に目をつけられる前に気配の消し方を覚えた方が良いかもね」
「うんうん。『絶』とか役に立つヤツ中心に!」
彼の安全が確保されたことに、安堵の溜息が出て、
まだ布団の中で眠っているであろうヒソカを思って口が緩む。
「が直接教えてあげれば良いのに」
「だから、私、詳しくないんだって」
「完璧なのになんでかしらね?やっぱり頭の問題かしら」
「・・・」
「暇な時に相手くらいはしてあげられるけど、もう一人ついたほうが良いわ。
私だけだと、私の悪い癖も全部ついちゃうから」
それは判るような気がした。
勉強でも何でもそうだが、一人の人の話を聞くよりも沢山の人の意見を聞いて学んだ方が、
総じて良い結果を出しやすい。心当たりは、一人いる。・・・シルバさんだ。
携帯番号も知っている。
が、なんだろう。電話をするのに死を覚悟しなければならないくらいの勇気がいるのだ。
無理だ。私には無理だ。
ヒソカが部屋から出てきて、三人で朝ごはんを食べた後、私はヒソカに念能力の話とニコラが先生になってくれると言う話をした。
ヒソカは念能力の話をすると胡散臭そうに私を見て、
それからニコラの話を持ち出すとすごく嫌そうな顔をした。
うん、ヒソカ。表情豊かな子に育ってくれて、私はうれしいよ。うん・・・。
ニコラが、天気が良いから外で教えると言い、ヒソカの腕を引っ張って引きずるように出ていくと、家はとても静まり返る。
食器を台所に持っていくと携帯の着信音がなった。午後に屋根の修理を業者の人に頼んでおいたのでそれ関係だと思い、携帯に出た。
「はい、もしもし、です」
『ああ、か。俺だ』
すみません。心当たりがないんのですが、俺俺詐欺ですか?
「あ、えっと」
『シルバだ』
すみません。心当たりはあります。・・・、切っても良いですか?
「あー、御無沙汰しております。」
『ああ。今日はちょっと頼みたいことがあって連絡したんだが、今大丈夫か?』
すみません。なんか、色々と大丈夫じゃなさそうです。
『実は、お前んとこのヒソカをイルミの修行に使いたいんだが』
「ダメです!無理です!確かにヒソカは一般の方より強いかもしれませんが、
暗殺一家の長男であるイルミ君よりも弱いんです。」
『いやに謙虚だな。奴の潜在能力は天才的だ。
聞く話によると、お前はまだヤツに念がなんであるか教えてないそうじゃないか。
俺がイルミと一緒に面倒を見るから問題は無いだろう?ヒソカ程のレベルの念使いなら、
できるだけ強い師についたほうが良い。これはヒソカのためでもあるんだ。悪い話じゃない』
「うっ」
ヒソカのためだと言われてしまうと断れない所もあった。現に先ほどまで、シルバさんに教えを請おうと思っていたくらいだ。
メリットは十分あるのだろう。
だが、問題は教育に悪影響を及ぼしそうな臭いがプンプンすることだ。
『約束しよう。絶対死なせはしない。』
「・・・よろしくお願いします」
ヒソカを悪の魔の手から守るため奉じた策、果たして吉となすか、凶となすか。
その時の私には、判断できなかった。