「青い空。緑の森。赤いリンゴ!まるで、御伽噺の世界に入ったみたい!!」
自給自足の生活はなんて素晴らしいのだろう!
私たちは、ゾルディック家でリンゴの木に登っていた。
無農薬、無添加の言葉に弱い現代人を象徴する私は、
シルバさんに頼んで私の唯一の得意料理であるアップルパイをつくるため、リンゴを取らせてもらっていた。
「ヒソカあんまり遠くに行って迷子にならないでね。イルミ君、ヒソカから目を離さないであげて」
ゾルディック家の広大な敷地に森のようなリンゴ畑があり、迷子になるのは簡単に思え、私はヒソカに忠告する。
因みに、ヒソカとイルミは、今日は修行を休み、私につきあってくれている。
ヒソカいわく、怪我しないように。イルミいわく、ミケの餌にならないように・・・(お願いだから縄に繋いで)
この二人が、いればリンゴの収穫なんてものの5分で終るだろうと思われるかもしれないが、
私がリンゴパイを作るのは、ゾルディック家の人達や自分たちのためではない。
流星街の子供たちに分けるためだ。
初めてHUNTERの世界に来た時、流星街の劣悪な環境に驚いた。
理不尽な世の中の犠牲になっている人たちを見ながら、問題意識を持つようになった。
あの時は、何も出来ない自分を悔やんだ。今なら、何か出来る。
私は、研究所に雇われて生活基盤を得て、得意分野のパソコンも手に入れた。
パソコンさえあれば、現役ITコンサルタントの私だ。どんな事業でも展開できるし仕事だってとってこれる。
私にとっての一番の幸は、この世界のパソコン技術が発展していなかったことだった。
日本や元の世界では普通に行われていたインターネットビジネスやサービス、
システムの構造がまだできあがってなく、この世界では私が第一人者として取り組むことが出来た<
(コンプライアンスとか知的財産とか、批判しないで下さい。すみません)
おかげで、パソコン、ああ、ここでは電脳ページっていうんだっけ、そう,
これの改革者として最近ネットの世界では有名にもなり、お金もざっくざく入ってくるようになったのだ。
私はそのお金を使って、流星街の子供たちを支援していきたいと思ったのだ。
ヒソカの臓器を取ろうとしている人間のお金を使い続けることには抵抗があったから、生活費も自分のお金で賄うようになった。
時間は確実に過ぎていく。
だからこそ、今自分がしたいことを考え、実行することが大切なのだと思った。
たとえ、この世界が虚構の世界だとしても、私がここにいて、そう考えて、そうしたいと思ったのであれば、そうすれば良いのだ。無駄なことではないと思う。
だって、私はいつも自分がしたいことをしているだけだから。
私がそんなことを考えているうちに、二人は両手一杯にリンゴを抱えてきて私の足元にバラバラと落とした。って、痛むじゃん!
「ちょ、二人とも、もっとデリケートに扱おうね」
「パイの中に入れるなら、少し傷ついたって関係ないよ」
「リンゴにも命があって私たちはそれを摘むいだのだから、それなりに敬意を表さないといけないのよ。」
「ふーん」
興味なさそうに鼻をならしたヒソカを眉を吊り上げて睨むが、既に彼は近くのリンゴの木を登っていた。溜息を軽く付いて、二人が大量に持ってきたリンゴをダンボールに詰めていると、イルミがふと呟いた。
「ヒソカとの雰囲気って、なんとなく似ているね」
「毎日一緒に過ごしているし、お互いに影響される面はあるんじゃないかな。 もう、ほとんど家族みたいなものだしね」
実際、ヒソカは最近よく私の真似をするようになった。
私が黒い髪を茶色に染めた時は、ヒソカは赤い綺麗な髪を水色に染めたし、私がミルキ君(1歳)に「んもう、食べちゃいたいくらい可愛い!」って言った時も、
私の真似して「うん。おいしそう」って言っていたし。
人の真似をしたい、そんなお年頃なんだろう。
木に登るヒソカを見て、目を細める。ヒソカと出会ってから、しみじみ幸せだなと感じることが多くなった。
幸せってこういうことを言うんだなって、ふとした瞬間に感じるのだ。
私は、この少年が愛しくて仕方が無い。
「あ、そのリンゴはまだ青いから取っちゃダメだよ」
「青くても食べれるよ」
「それはそうかもしれないけど、熟してからの方がおいしいから、また来週取りに来ようね」
「うん」
君に出会えた奇跡を、感謝した。