最近、ケインという男が、家を出入りするようになった。
ニコラやイルミだけでも煩わしいと思っていたのに、またやっかいな男がに会いに来るようになった。
は、その気がないのか、いつも邪険に扱い、適当にあしらっているが、
彼女が押しに弱いタイプだと言うことをボクは知っている。彼女がケインの結婚を受け入れるのも時間の問題だった。
「ヒソカ、これってイカサマっていうのよ?」
「ニコラ、世の中,実力が物言うんだよ」
ボクとニコラはリビングルームでババ抜きをして、の帰りを待っていた。
最近は治安が悪いと言う理由からニコラやケインが頻繁に家に出入りするようになっていたが、
ケインは以外に興味が無いのか、ボクと会話することも遊ぶことも無かった。
勿論、ボクもやつが気に食わないので目すら合わさない。
「、遅いわね。何かあったのかしら?」
「どうせ、またケインとお茶でもしてるんじゃないの?」
がいない間に、ケインを殺そうとは思っているが、いつも黒尽くめの仲間(ニコラ含む)といるため、未だその機会が無い。
「あら、かわいいのね。やきもち?」
「ねえ、ニコラ。アイツ殺すの手伝ってくれない?」
「私に助けを求めるなんてどういう風の吹き回し?あ、ババ抜いちゃった・・・。」
パラパラパラとトランプが舞い上がり、床に散らばる。それを、かき集める。
殺すにしても慎重に殺さなければならない。決して、ばれてはいけない。
に決して知られてはいけないのだ。
彼女は、そういうことが嫌いで、たぶんそういうことに関して無知なのだ。
無知だから嫌悪し、憎悪を抱き、そして恐怖に怯える。
何も怖がることなど無いのに。
生きていくために邪魔なものを消すと言うことは、当然のことで常識だ。
決して悪いことでは無い。
快適な生活のために不要なものを処分することは、誰しもがやってきたことで、それは正当性を有する。
エゴ?毎日、食卓に並ぶ料理だって、一つ一つ命があったものだ。
言うなれば、ボク達は毎日死骸を食べている。命を食い散らして生きている。
それが生命活動であり、それは現に許されていることではないか。悪いことなどしていない。
生きるために、必要な狩りをしているだけ。
それが、今回はケインになるだけ。彼はボクの生活を脅かす存在になる。
だから、消すんだ。
国家も同じようなことをやってるじゃないか。戦争とかね。
「助けてあげたいのは山々なんだけど、その必要はなさそうよ」
「?」
「今朝、ケインは死んだから」
トランプを切っていた手が止まる。ニコラは目を弧にして、笑い、それに釣られるようにボクの口も弧を描いた。
「昨日、研究所を抜けたいってボスに言ったらしいの。だから消されちゃったのね」
「幼馴染だったのに、ずいぶん冷たいんだね。」
「そう?」
「でも、彼は馬鹿だね。研究所を出て、どうやって生活していくつもりだったんだろう」
「と一緒になるためだったんじゃない?」
「・・・へえ」
「ヒソカ、彼女には気をつけなさいよ?」
「?」
「彼女は一見人畜無害な人間に見えるけれど、私たちにとっては非常に危ない人間。
彼女の価値観に捕らわれてはいけないわ。彼女の正義は、私たちのそれとは大きく違うから」
「・・・」
「彼女に依存してはダメ」
「・・・狼少女みたいだね」
「何よ。それ」
「が言ってたんだ。
狼に育てられた二人の姉妹が、ある日人間に発見されて保護されるんだけど、
結局二人は人間の世界に馴染めず、死んでしまうって話。
同じ人間でも育った環境が違えば、全く違う生物になるし、
その後で違う生活をそれまでと強いられても順応できないんだって」
「・・・彼女と私たち。どちらが『狼少女』になるのかしらね」
「さあ。どっちにしろ、ボクは死なないし、も死なせないよ。ずっと一緒にいるから」
「あら、意外とロマンティストなのね」
クスクス笑うニコラから、カードを引くと、ハートのエースだった。
玄関の方からインターンホーンの音が聞こえてくる。
今日の夕食はなんだろうか?
ケインが死んだことはどう伝えようか?
ニコラを、どうやって追い出そうか?
玄関に走りながら、いろいろなことを頭にめぐらす。
でも、本当はどうでも良い。
ドアを開ければ君がいる。
「お帰り、」
君は、ボクの全てだった。