有為転変

30 / 危機一髪


「食べちゃいたいくらい、かわいい!」

の声が聞こえた気がして振り返ると、黒髪を立てた男の子が目に入った。

「本当だ、おいしそうだね。

周りにもサングラスをかけた青年、銀髪に金髪と、今年は豊作だ。



















二次試験に合格した受験生達は飛行船に乗り込み、次の試験会場に着くまでの間、各自自由な時間を過ごすことになった。ヒソカも、軽く食堂で食事を取るとシャワー室に向かった。



豚やら鳥やらを料理して、ついた獣や血の臭いを、熱いシャワーで洗い流し、コルクをキュッと締めて、白いバスタオル取り、換気扇を回す。バスルームの視界が開いてくると、大きな鏡が自分を写した。鏡に映った顔を見て口先を歪ませる。

嫌な面だ。


昔からニコラと似てはいると自覚していたが、成人すると瓜二つになった。を守れなかったあの男と同じ顔なんて、反吐が出る。昔はそれが嫌で仕方が無くて、いっそのこと整形してしまおうかと考えたこともあった。
しかし、自分もを守れなかった男の一人なのだ。

だったら、これほど相応しい顔もないのではないのかと思う。この顔は、を殺した男の顔だ。鏡を見るたび、思い出せば良い。 自分の犯した罪を。



シャワー室から出ると、適当な寝床を探そうと広間に足を向けた。別に疲れてもいないので寝なくても良いのだけれど、とりあえず、パーソナルスペースを確保したかった。すると、視界の端に良く目立つピンクが入り、足を止める。




趣味の悪いショッキングピンクのリュックサックを持つこの少女は、会場では目立っていた。 そうでなくとも、白いワンピースに麦藁帽子という, 遠足かなんかと間違えているのではないかと思わせるファッションは、場違いで目に付く。



この10歳前後の少女は、一次試験で敗退するのが目に見えていたが、強運なのか、それとも実力なのかここまで残っていた。もしかしたら、協会の重鎮と知り合いなのかもしれない。用意があまりにも良すぎて、こちら呆れるほどだった。


ローラー付の靴ならまだしも、ヌメーレ湿原の地図やクモワシの卵やグレイトスタンプの丸焼きをリュックの中に入れて持ち歩くなんて、試験内容を知っていますと、言っているようなものだ。まあ、あの重い荷物を背負ってきたことは評価できるかもしれないが。


近くによると、穏やかな寝息が聞こえてきた。無用心だな、と思いながら彼女の髪に手を伸ばす。手で髪を掬うと隠れていた顔が、露わになった。

彼女は本当不思議な少女だった。何よりも驚いたのは、彼女が




・・・と、似ているね。」




声がするほうに視線をやると、変装を解いたイルミが壁に背をもたれて立っていた。 いつも同様、その顔からは何を考えているのか伺えない。闇色の目は何も映さない。



「ククッ、そうかな?」




手にトランプを出して、少女の首に当てると血が滲みでる。途端、彼女は痛みからパチリと目を開けた。

目が合ったので、ニヤリと笑ってやったら、現状を理解したのだろう。 その顔はすぐに青くなった。




「殺しちゃうの?」




イルミが意外そうに声をかけてきたが、当然のことを聞かないでほしい。





「うん、不愉快だから★」






トランプに力を込めようとした時、携帯の着信音がなった。 溜息をついてポケットを探り、携帯を取り出し耳に当てる。




「ああ、マチか★ダメじゃないか?いくら、ボクを愛しているからって、試験中に電話をかけてちゃ・・・、  ふーん・・・。へー・・・。クロロがね・・・。そう・・・うん、気が向いたらね★」




話しが一通り終ると、勝手に切られた。やれやれと肩を竦めて、携帯電話をポケットに入れる。床に目を向けるが目当てのものが見つからず、周りを見渡す。




「あれ?彼女は?」




先ほど、少女がいた場所には毛布が置かれているだけだった。



「逃げたよ」



無表情にそう言うイルミに、多少の苛立ちを覚えたが、すぐに気を取り直す。






トランプに付いた血を舐め、口を歪ませた。








ま、良っか。いつでも殺せるし。

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