有為転変

31 / 主客転倒


死ぬかと思った。マジ、死ぬかと思った。目が覚めたら、不吉な笑みを浮かべたピエロにトランプ突きつけられていた。 完璧トラウマだ。もう、安心して一人で寝れない。







長い廊下を走り抜けると、クラピカとレオリオが寝ているのを発見し、安堵の溜息をつく。二人がかけている毛布を捲り、自分が入れるスペースがあることを確認して、横に荷物を置く。断られても困るので、了解を得ず、無断で二人の毛布の中にそのまま潜りこんだ。





かくして、すがすがしい朝を迎えられたであった。




「かくして、じゃねーよ。何まとめてんだ!コラ」



「おはようございます。レオリオさん。今朝は早いですね」


「何でお前が此処にいんだ」


「レオリオ、何で朝からそんな落ち着きが無いんだ。いいではないか。 別に私たちに危害を加えたわけでもあるまい。大方、怖い夢でも見たんだろう ・・・えーと花子だったかな?」



「はい、花子です。クラピカさん。気違いピエロに殺されそうになる現でした。」


「「・・・」」


顔を真っ青にさせるレオリオに酷く共感を覚え、同情するような目を向けてくるクラピカに苦笑した。




一晩寝てみて、頭が冴えて、やっと昨日起こったことが理解できるようになったように思う。とりあえず、難は逃れたけれど、あくまで一時的なもので、次にあったら殺されること間違いないだろう。



クラピカとレオリオにお礼を言うと、はその場を後にした。飛行船が止まりトリックタワーに着いたと同時に床下へ滑り込み、ヒソカと合わない状況を作った。 その後は、指示された道を無視して、制限時間ギリギリまでその場に留まり5分前になってから床を叩き割ってゴールした。 当然と言えば、当然かもしれないが、はゴンたちとほぼ同時に到着したのだった。






皆、私の馬鹿力にはポカンとしていたけれど(彼らと違って、私は素手で壁を壊したから)君たちだって将来的にはこんな化け物染みた力を手に入れるんだよ。
特にゴンなんか、主人公だから最終的にはあのピエロを殺すことが赤子の手を捻るのと同じくらい簡単になるんだよ(たぶん)

ピエロなんか、所詮ドラゴンボールで言う所のピッコロだ。 なんか、始めは世界最強とか騒がれているんだけど、新たな敵が出てくる度、その存在が薄くなって、 知らないうちに仲間っぽくなってて無難な脇役キャラになっていくタイプ。 べジータにもフリーザにも勝てなくて、最終的に『悟空、後はお前に任せた』とか何とか言って、バタリと倒れる雑魚キャラになってしまうんだ。・・・クロロに消されてしまえば良いのに。





・・・。


考えが、こう真っ暗な方向へ進むのは私が悪いわけではない。ピエロに殺されそうになって精神をやられたんだと思う。

いや、病むよ。普通。






4次試験は、とりあえず、気配を絶って誰とも会わないよう過ごした。 なんだ、この逃亡劇は。私が一体何をしたっていうんだ。




散らかっている死体から番号札を取り出して、3枚集める。意外とサバイバルなこの土地では獣に食べられたり、毒を含む動物や魚を食べて死ぬ受験者が多く、戦わなくとも順調にプレートが手に入った。

ターゲット?・・・そんな、人を選ぶなんて余裕はありませんよ(生きている人を発見したらすぐ逃げる。これ、鉄則)





それでも、所詮は狭い島。会うときには、会うもんなんだよね。クラピカの声が聞こえてそちらの方に足を向けたら、レオリオも発見し、少し緊張がほぐれて声をかけようとした。

が、彼らと一緒にいるピエロを視界の端に捉えて木陰に隠れた。最近、こんなのばっか。







「ヒソカ、お前は、何故こんなに簡単に人を殺すんだ!」





クラピカの切羽詰った声が聞こえて、こんなシーンあっただろうかと逡巡した。
どの場面だか分からないのは原作に書かれていない彼らの物語があるからか、それとも私が頼りない記憶力のからか。 いずれにしろ、ここは上手く逃げた方が賢明だと悟る。

しかし、足音を立てれば、ピエロには聞こえるだろうニコラが昔言ってたように私は一応「絶」ができているらしいから、動かない方が得策かもしれないと考え直し、 彼らから影になるように生い茂る緑の影に身を潜め、息を殺した。



「面白い質問だね★」



「人を殺すと言うことは、その人の命だけでなくその人を想う人たちの心を殺すと言うことだ!お前にはいないのか!?」




ちょ、クラピカさーん!クルタ族のこと思い出して、感情的になっちゃってるの?
目が赤くなっちゃってるの?そうなの?

え、こんなシーンあったっけ?てか、ピエロ相手にそんな事言っても通じないよ!そんな御託は良いから逃げて!殺されないとは思うけど、私の心臓に悪いから早く逃げて!クラピカさん!





「イヤだな。ボクにだって愛する人はいたさ。幼かったボクに色々なことを教えてくれた・・・とても大切な人だった。」



その人一体何教えたの?

表に出ろ。

そして、ピエロに暴力を受けた全国の被害者に土下座しろ。




「その人は・・・今」


「ボクが殺しちゃった★もう10年前のことだよ?」



・・・この世界、本当救いようがない。

クラピカさんも押し黙った。うん。分かるその気持ち。


重い空気がその場を支配したけれど、ピエロの携帯が鳴ると彼はその場を後にした。








私も彼の気配が無くなると、その場から離れた。 主人公組と一緒にいることが、いかにリスクを伴うものか改めて実感し、一人で行動することに決めたのだ。ヒソカと生活を共にしていたから忘れていたが、私は寝ず食わずでも生きていけるのだ。

だから、ゼビル島の生活はそこまで苦にはならなかった。


途中、ボドロさんに攻撃をしかけられたけど、彼が持つプレートと私が持つプレートの中にお互いのターゲットのものがあったため、話し合いで解決し、何となく気が合うことと、退屈だと理由から、最終日まで生活を共にすることになった。時折、優しく微笑む彼の表情が、なんとなく祖父に似ていた。





まあ、こうして私は運良く最終試験まで進むことができた。何か大事なことを忘れているな、と思いながらも、ピエロの恐怖でいっぱいな私にとって全てのものが瑣末事になっていた




原作通り、最終試験の前に面接があるらしく、私はネテロさんがいる個室に通される。
老人の微笑とはいつの時代でも安心感を与える。ほんわかした空気が漂う中、彼と私は互いに自己紹介をし、その後彼から質問がされた。とりあえず、戦いたくない人物は「44番」とハッキリキッパリザックリ答えよう、そんなことを考えながら耳を傾ける。





「ハンターを志望した動機は何じゃ?」




「え、志望動機ですか?・・・え」




そういえば、なんで私ハンター試験を受けているんだろう。



あれ、私、ハンターになりたかったんだっけ?




その答えを思い出したのは面接が終って、最終試験が始まってからだった。

















アルツハイマーか。私。



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