有為転変

32 / 絶体絶命


涙の数だけ強くなれるって本当ですか?そしたら、私、現時点で最強な気がする。







ゴン君とハンゾーさんの試合が開始されて、ヒソカを助けに来たことを思い出した私は、慌ててネテロさんに受験者の名簿を見せてもらえるよう頼んだ。そして、ゴン君とハンゾーさんの試合中にも関わらず、会場を抜け出して名簿を借り脱落者の写真と名前を確認した。(最初からこうすればよかったんだよ!)

だが、意外なことに、脱落者の中にヒソカに似ている人間は一人もおらず、『ヒソカ』と言う名前も無かった。偽名を使っているのかもしれないと考え、ミルキ君に電話して確認したが、彼がそんな面倒なことヒソカがやる訳無いと言い切ったのでその線も消えた。そこで、そもそも彼が本当に参加していたかどうかという、根本的な疑問を抱き、ミルキ君に訪ねた所、イルミ兄ぃに聞けばいいじゃんと返された。






納得したは電話を切ると、イルミがいる試験会場のドアに手をかけた。 ギタラクル姿のイルミは、非常に近寄りがたいが、さっさと聞くだけ聞いてこの殺伐とした会場を後にしたい。ハンゾーにコテンパンにやられているゴンを横目で見ながら、足を進める。


が、目的の人物の隣に、トランプタワーを作って遊んでいる化け物がいるのを見ると、は踵を返した。レオリオとクラピカの近くに行き、荷物を置いて座った。

世の中は危険に満ちている。







今は無理そうだが、ピエロとクラピカが戦っている間にでも近づこうと、考え溜息をついてトーナメント表を見る。





Sample








試験の最高責任者であるネテロさんがいうには、今まで行われた試験の成績順にチャンスが多く与えられているらしい。 まあ、やっぱり私は一番資質がなかったのだろう。レオリオよりも成績が悪かった。




しかし、とりあえず、このまま順調に行ったとしても、の対戦相手は念を使えないレオリオかボドロになる。いずれにしろ、は棄権することを決めていた。ハンター証の必要性を感じたことが無かったし、何より早くヒソカに会いたいと言う思いがあった。



には、彼が元気かどうか知りたいという親心もあったが、それ以上に彼に伝えたいことがあった。それは、幻影旅団についてやヨークシンで起こることやキメラアントとか、 とにかく原作の知識を教えて彼を危険から遠ざけたかったのだ。



ヒソカは今年24歳を迎える青年になっているだろう。どんな青年になっているか、と想像したら、確かにイケメンの顔が浮かぶ。しかし、優しい良い子に育っただろうと希望的観測をするには、は年を取りすぎていた。 あのような環境で育った子供が、清く正しく美しく育つことは稀だろう。


彼がどんな大人になっていても、歩み寄ろう。 最初に謝ろう。彼に無断で職務放棄をした自分は、彼がどんな人間になっていたとしても、注意はできない。話を聞いて、彼を理解する努力をしよう。彼がどんな風に生き、何を考え、これからどうしたいのか。彼がいたから私はこの世界に来ても、混乱せずに生きることが出来たと思う。 私を求め、私に存在する意味をくれた彼には、本当に感謝していた。だから、もう一度会いたかった。会って、謝ったら、次にはお礼を言いたい。それは、自己満足だろうけれど、そうしないと気がすまないのだ。



そんなことを悶々と考えていたら、試合はいつの間にかボドロさんとピエロの試合に移っていた。



・・・。




「レオリオさん、あの言いづらいんですが、キルアさんとギタラクルさんの試合ってもう終ったんですか?」

「お前、この会場にいながら、それはないだろ。」




私はあろうことか、この漫画の名場面でもあるゾルディック家の兄弟喧嘩を見逃してしまったらしい。

結構ショックだ。



「彼とボドロさんが戦っているということは、クラピカさんは勝たれたんですね」




「え、あ、ああ」



クラピカVSピエロという名場面も見逃したらしい。あー、惜しいことしたな。 ハンター試験の醍醐味なのに、この二つの試合がこれからのHUNTER×HUNTERの伏線になるのに、 此処まで来たら、一応見てみたかったよ。・・・ついてないな。


あ、でも、もう一つ、重要なイベントあった気がしたんだけど・・・。えっと、ああ、そうだ。キルアがボドロさんを殺しちゃう場面が残っていたね. ・・・本当、ついていないな。そんなシーン、お金払っても見たくないよ。



「ヒソカめ、一体何のつもりだ?」



声がするほうを見ると、隣にいたクラピカさんが苦虫を潰したような顔をしていた。



「どうされたんですか?」


「・・・花子、君はその思考に耽る癖を直したほうが良い。」



眉を顰めて、クラピさんは私を見下ろしたが、訳がわからなくて説明を求めようと、レオリオさんを探す。しかし、先ほどまで隣にいた彼の姿が確認できなくて首を傾げた。



「レオリオとヒソカが対決するんだ」


「え」



クラピカさん曰く、ピエロは今の所全ての試合で「まいった」と言い続けているらしい。あまりにも展開が速くて思考が追いつかないが、原作と違い、ボドロさんはハンター試験を合格したらしい。

一体何がどうなっているんだ。



「まいった」





レオリオさんとピエロの試合が開始された直後、静かな会場にピエロの声が響いた。 全然参っていなさそうな顔で、試合を放棄するピエロに皆訝しげな表情を浮かべるが、 いずれにしろ、これで、ほとんどの人がハンター証を手にすることになる。死者は1人も出ていない。

安堵の溜息をついて、私はトーナメント表を見た。




「・・・」






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安堵の溜息をついたさっきの自分をぶん殴りたいと思ったが、その前に、噛まずに「まいった」と言う練習をしなければならない。



問題はタイミングだ。

奴のトランプが私の首に届く前に、「まいった」と言い切らなくてはならない。 至難の業だ。しかし、私にはあらゆる逆境を乗り越えてきた経験と実績がある。 かのゾルディック家とだって交流がある。それを思えば、怖いものなんていない。


ポジティブだ!ポジティブ!上を向いて歩こう!(さもなければ涙が落ちる!) 試合開始と同時に、噛まずに「まいった」と言うくらい子供にだって出来る!落ち着け自分。クラピカさんが、不安そうに見下ろしてくるけど、 彼がそんな顔していたって私はいつものように上手くやれる。

「花子、大丈夫か?」


「だ、だ、だ、だ、ダ、イジョウブ」



か、噛んだ。



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