・、それがボクの6人目の世話係の名前だった。
黒髪に黒目に白い肌。そのモノトーンが彼女の存在に儚い印象を与えていた。
口を開けると、色づき始める彼女の存在は奇妙で、好奇心をそそられた。
他の人よりも幾分か扁平な顔は彼女のものごしをやわらかく見せた。
朝、目を覚ましてリビングに行くと、テーブルの上にサラダと牛乳、バターが用意されていた。
「あ、おはよう、ヒソカ。もう少し待ってて」
彼女が来てからもう1ヶ月がゆうに過ぎた、最初は戸惑っていた自分も、
今では彼女の言葉に普通に従って普通にソファに腰をかける。
彼女が来て、この家はずいぶん変った。
よく言えば、豊かになった。悪く言えば無駄なものが増えた。
テレビを始め、電子レンジ、エアコン、除湿機に洗濯機が備え付けられ、
薄汚れていた壁は、花柄の壁紙によって綺麗になった。僕の部屋まで花柄模様にしようとしていた彼女を止めるのには苦労した。
窓のには上品なレースのカーテンがかかり、家は全体的に明るくなった。
「ヒソカ、朝ごはんだよ」
ソファから腰をあげてテーブルの席につく。大きな皿の上にベーコンと目玉焼きが乗せられている。
今日は成功したの、と一人照れている彼女はボクよりも子供っぽい性格を持ち合わせていた。
「いただきます」
手を合わせてそう言うと、彼女が喜ぶので食事の前には必ずやって見せる習慣がついた。
は今までの世話係とは違った。
今までの人たちは、1週間に一度ほど、自分が生きているかどうかを確認しに来ただけで、
到底、世話係とはいえないものだった。
彼女たちを恨んだことはないし、むしろそれを当然と受け入れてきた。
最低限の衣食住の確保さえ出来れば、ボクは満足だった。
必要なものは人を襲えば簡単に手に入れることができたし、ボクにはそれだけの能力もあった。
が来てからは、不満が溜まるようになった。
何かをしてもらうことに慣れないボクは、戸惑い、焦り、迷った。
自分のペースが乱されて苛立ちを感じることもあった。
彼女は知らなかった。ボクの立場を。
彼女はわかっていなかった。彼女の立場を。
彼女は理解していなかった。この世界を。
は、何もかもが違ったし、その分、間違っていた。
けれど、それに魅了される自分がいた。
まるで、宗教のようだった。
彼女が黒といえば、白でも黒のように見えてくるし、そう信じ込むことが出来た。
「はボクとは違う世界の人だね」
そう言ったことがある。
「なんで、知ってんの!?」
彼女に返された言葉に、お腹を抱えて笑ったことをボクは忘れない。