なんとか、文字が読めるようになった私は、新聞や雑誌を読み漁り、現状把握に勤しんだ。ヒソカはたまにふらっと外に出る時があり、最初は危ないという理由で外出禁止令を出していたのだが、
念能力者である彼が容易に傷つけられることはないと思い、携帯を渡して散歩を許可した。
私が家事をしている間はどうしても暇になるヒソカのことを思ってのことだった。
これは私にもメリットになった。
ヒソカがいない時間をつかって、この世界についてや今後について考えることができたからだ。
結論から言おう。
この世界は、やっぱり、HUNTER×HUNTERの世界だった。
注文しておいたパソコンを開いて色々調べてみたら、
ヨークシンや、ククルーマウンテンという地名を発見し、
そして、・・・ゾルディック家という暗殺一家の存在が確認できた。
また、ハンター教会の会長がネテロさんだったこともあり、私はこの世界が漫画の世界であることを確信したのであった。
原作前かどうかは分からないし、本当に原作通りに歴史が動くかも分からないが、
決心したことが一つある。
「さっさと帰ろう。キメラアント編の前に帰ろう。うん、そうしよう」
とりあえず、ハンターサイトを片っ端からハッキングする日々が続くだろう。
もともとITコンサルタントに勤めていた私はパソコンが得意だった。
これだけたくさんの念能力者がいれば、異世界に人間を飛ばせるヤツが
一人くらいいてもおかしくない、筈だ。
希望を捨てずに切磋琢磨生きる私は偉いと思う。うん。
玄関から物音が聞こえて、足音でヒソカだとわかる。
パソコンの電源を落とし、リビングへ向った。
「おかえり」
「ただいま、」
「アップルパイ作ったんだけど食べる?」
「うん」
「じゃ、今紅茶入れるね。ヒソカはシャワー浴びてきな」
「ね、後でトランプしよ?」
「いや、今日はチェスの気分。」
ヒソカは一瞬眉を顰めたが、頭を撫でるとそれを避けるようにシャワー室に向っていった。
ヒソカはトランプ遊びが好きだった。
私も結構強い方なので好きではあるが、HUNTER×HUNTERの世界でトランプを遊ぶ気にはとてもならない。
この世界で、トランプは不幸と変態の代名詞だ。
ミルクを鍋にかけ温め、コップの中にココアをスプーン三杯入れる。
アップルパイを包丁で切ると、シナモンの香りが部屋中に広がった。お気に入りのお皿にクリームを添えて乗せてみると、うん、とても立派に見える。
味の保証はできないが。
「って、家族はいるの?」
アップルパイを片手に、チェスをしている時、ふいにそんなことを聞かれた。
自分の両親は自分が小さい時に事故で死んだのだが、それは聞いて気持ちの良いものではないし、
どう答えようか一瞬迷ったが、聡いヒソカの前で嘘をつくのはよくないと思い、結局真実を話すことに決める。
「6歳くらいの時に両親は死んで祖父に育ててもらってたけど、その祖父も去年死んで今は独り身だよ」
「じゃあ、ボクと一緒だね」
「え?」
「チェックメイト!」
「え?!」
「ボクが勝ったら、トランプで遊んでくれるって言ってたよね?」
勝ち誇ったヒソカの顔を見てげんなりしたが、
この時気になったのは、次に遊ぶゲームのことよりも、彼が言っていた言葉の意味だった。