畑シリーズ

畑に蛤:見当違いのことをすることのたとえ




カーテンの隙間から差し込む朝日が目に染みる。今は何時だろうか。 起き上がろうとして、ふと腕にある重みに気づき、ギョッとして、ベッド下においてあるクナイに手を伸ばすが、 視界に、栗色の髪が光って揺れたのを捕えて、手を止める。


「あ」


間の抜けた声が自分の口から出てきた。 これで、何度目だろうか。


女と朝までヤルという経験はあっても、そのまま寝ると言う経験がなかった俺は、隣にいる彼女を何度か殺しかけたことがある。


「幸せに慣れないって、怖―いね」


腕の中にすっぽり納まっている彼女を改めて見て、目を細める。 栗毛の髪に唇を落とし、彼女の鎖骨に顔を埋めようとした所で、ビクッと彼女が肩を揺らした。


次の瞬間には、俺から離れ、机の上にあったクナイを投げつけてきた。


上半身素っ裸の俺は、そのクナイを受け止めることも出来ず、横目でクナイが後ろへ飛んでいくのを見過ごした。



ガッシャーンと窓ガラスの割れる音が部屋に響く。




「あ」



の、間の抜けた声が聞こえてきた。


ガラスのない窓から、朝の爽やかな風が入ってきて、鶏の鳴き声が今日の始まりを祝福してくれている。



「幸せに慣れないって、怖ーいね」



俺がそういうと、はバツが悪そーに頭をかいて、そのまま風呂場に消えていった。


枕元に栗色の髪の毛を見つけ、なんとなくうれしくなり、
彼女の熱がまだ残っているベッドで、俺はもう一眠りすることに決める。




これが、俺らの、一日の始まり

Index ←Back Next→